私の前に座る男性が、
涙を流していた。
その人の気持ちがわかる。
最後の曲、リベルタンゴが
終わった瞬間は、
感動で言葉を発せずには
いられない。
客席から歓声が上がり、
感動で立ち上がる人も。
今宵は、宮田大チェロリサイタル。
地元が誇るチェリストだ。
毎年、彼が地元に帰ってくるのを
地元の人びとは楽しみにしている。
毎年、地元で演奏会を開いて
くれるのだ。
ホ一ルは満席。
皆が息をのむように
彼を見つめ、集中して
聞き入っている。
地元への愛が、
舞台上から観客を見る
彼の目から伝わってくる。
地元の人びとに
音楽の素晴らしさを
伝えようとしてくれている。
感謝と愛が溢れてる。
全身でチェロを奏でる迫力。
息づかい。
彼の技術からチェロが
いろいろな表情をする。
チェロはこんなに激しい
ものなのか。こんなにも
はかない音色をしているのか。
こんなにもいろいろな表情を
見せるものなのか。
圧巻だ。
こんな素晴らしい音を
こんなに身近に聞くことが
できる喜び。
誰かに伝えたい。